2024年08月27日
1.「裁判」についても勉強を
トラブルが起きたとき、最後の拠り所になるのは、「裁判」です。もっとも、「裁判」には限界もありますから、企業経営を続けていくうえでは、裁判についても勉強しておくべきかと思います。
2.なぜ、「証拠、証拠!!」と、言われるのか?
(1)「真実」が分からないとき、どうなるのか
裁判制度は、国家が国民のトラブルについて、最終的に解決する制度として設計されています。残っている証拠によって、事実の有無を判断する他ありません。そうすると、「言ったのか、言わないのか」、「事実があったのか、なかったのか」、結局、分からないということは、良くあることなのです。
そして、「真実」が分からないとき、法律では、「主張立証責任」という考え方によって、どちらかを不利に、どちらかを有利に扱うことを制度として予定しています。つまり、「分からない」からと引き分けはなく、「分からなくても」、白黒はっきりつける制度なのです。
(2)主張立証責任を負うのは?
基本的に法律では、「主張立証責任」という考え方を用います。事実が分からないときに、負けるリスクを負うのは、「自己に有利な主張をする側」とされています。
例えば、大家業を営んでいる場合でいうと、賃借人の賃料滞納が続いているので、出ていってもらい、不払賃料を回収したいとします。「出ていってもらう」という自分に有利な法的請求を主張し、「未払賃料を払ってもらう」という自分に有利な法的請求を主張するので、訴えを起こす賃貸人側が、主張立証責任を負うことになります。
別の事例を挙げると、購入した土地の地盤が弱いという瑕疵があった、建築会社の工事が不十分で建物に瑕疵があったとします。土地の購入の場合には買主が売主に対して、建築工事の瑕疵の場合には施主が建築会社に対して、「損害賠償請求をする」という自分に有利な主張をする側、すなわち、訴えを起こす側が、主張立証責任を負うことになります。
(※厳密に言いますと、全ての主張立証責任を訴える側が負うわけではないので、あくまで大枠です。)
やや雑な整理にはなるのですが、「法律によって被害を回復する側」が、今の時点よりも、「自分に有利な主張」をすることになるため、主張立証責任=事実を立証できない場合の敗訴リスクを負う、と言い換えることができます。
(3)なぜ、「証拠、証拠!!」と、言われるのか?
裁判制度は、後から裁判官が事実の有無を審理する制度、分からないときには、どちらかを敗訴させる制度、という制度的限界から、「法律によって被害を回復する側」のほうが証拠を準備しておかないと、負ける制度になっています。
このようなリスクは、「事業」「会社」を営む上では、恒常的に発生するリスクです。だからこそ、企業法務では、「契約書」「取引履歴」を残す等、証拠を残すことが意識されており、顧問弁護士や法務部などを置いて、突発的なトラブルにも備えていることが多いです。
(4)「主張」「立証」責任
今回、「主張立証責任」という言葉を使っています。
「主張責任」というのは、自分に有利な主張があれば、主張しておかないと、裁判では取り扱いませんよ、ということです。他方、「立証責任」とは今回お話ししたように、「立証できなかった場合」に、どちらかが負ける責任を負いますよ、という制度です。
3.まとめ
主張責任は、かなり法的・技術的な事柄なので、今回は、「立証責任」に焦点を当ててお話ししました。
ご自身で訴訟することで、主張できた法的請求を見落としている、または、依頼した弁護士が必要な主張を見落としている、などによって敗訴するリスクが「主張責任」というものです。裁判官がフォローしてくれることもありますが、「主張責任」のことを考えると、トラブルになった際には、その分野に慣れた弁護士に相談に行くのがベストと言えるでしょう。