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契約不適合責任?

2024年05月13日

【契約不適合責任を主張したい!】
 「契約不適合責任」という言葉は、聞いたことがない方も多いのではないでしょうか。2020年4月の民法改正によって、従前の「瑕疵担保」という制度から、「契約不適合責任」という制度に変更されました。今回は契約不適合責任について、事例を交えて解説していきたいと思います。
 例えば、Xは自己所有の土地を「公簿面積200平方メートル、1平方メートル当たりの単価20万円、価格4000万円」としてYに対して売りました。しかし、契約後に実測面積が180平方メートルであることが判明し、Yが予定していた建物の建築ができなくなってしまいました(以下、「本件事例」といいます)。この場合にYはXに対してどのような請求をすることができるでしょうか。

 

【契約不適合責任の基礎知識】
1 そもそも、契約不適合とは、売主は、買主に対して、売買契約に基づき、種類・品質・数量に関して契約の内容に適合した物を供与すべき義務を負うことから、引き渡された目的物が契約内容に適合しないものであるときは債務不履行と評価されることをいいます。要するに、売主が問題ある物を買主に引渡した場合には、ちゃんとした引き渡しとはいえず、何らかの責任を負いましょうということですね。
 ここで、契約不適合責任はどのような場合に認められるのか、瑕疵担保時代のものにはなりますが、裁判によって争われた具体例をみてみたいと思います。

(1)売買によって取得した土地の土壌に「ふっ素」が含まれていたという事例(最判22年6月1日判例時報1508号202頁)において、ふっ素が法令に基づく規制対象となったのは売買契約締結後であり、契約時に誰も有害物質であると認識することができなかったとして契約不適合責任を否定しました。
 例えば、土壌汚染が含まれており、後から判明したというのであれば、典型的な契約不適合責任を追及できるケースです。今回の裁判例では、「契約時にはふっ素が規制物質ではなく」、「契約後にふっ素が規制物質になった」という特殊なケースでした。
 裁判例では、契約時には有害性が認識されていなかったために、「瑕疵」にはあたらないという判断となっています。
 
(2)これに対し、再度調達可能な法的には不特定物と呼ばれるものの売買において隠れた瑕疵があった事例(最判昭和36年12月15日、判例時報283号23頁)においては、買主が瑕疵の存在を認識した上で履行として容認していたような場合でなければ、債務不履行の一場合として損害賠償請求権及び契約解除権を有するとして瑕疵担保責任を肯定しました。
 少し学術的な話になるのですが、瑕疵担保時代には、代替可能な不特定物については、一般的な債務不履行で処理、代替不可能な特定物についてのみ瑕疵担保責任にて処理という枠組みで考えられていたので、その意味合いで有名な裁判例です。ただ、民法改正により、特定物・不特定物の区別が重要ではなくなり、契約不適合責任にてどちらも処理できるようになりました。

 

2 さて、契約不適合責任を追及する場合の買主の救済手段としては①追完請求(民法562条)、②代金減額請求(民法563条)、③損害賠償請求・契約解除(民法564条、541条)があります。

(1)①追完請求というのは、買主が売主に対して、目的物の修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しによる履行の追完を請求できます。この場合、売主は買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることもできます。
 要は、一部不完全なものを修理や、追加納品等で補ってもらえるという方法ですね。現実には一番よく用いられる方法だと言えます。

 

(2)②の代金額減額請求というのは、言葉の意味の通り、本来の代金から減額請求する方法です。基本的には①追完請求を先に行い、それでも対応してこない場合には、代金を減額してバランスをとるという方法です。そのため、買主は、売主に対して追完の催告をし、相当期間の経過を待って代金減額請求をしなければなりません(民法563条1項)。もっとも、追完自体が不可能な場合や、売主側で追完することを明確に拒絶しているような場合には催告なしに代金減額請求をすることができます(同条2項)。

 

(3)③の損害賠償請求権や解除権としては、今回の売買契約を解除したり、問題があったことにより被った損害を賠償することができます。契約不適合責任の内容や程度にもよりますが、軽微な債務不履行で解除することはできないので、最終手段という位置づけになります。

 

3 実務的には、契約不適合に関する訴訟は立証が難しく、また時間とコストも非常にかかるため、契約時点物件の性質を見極めて、リスクがあるなら、売買代金を減額してもらうなど、事前のリスクヘッジが重要になります。
 また、個人の売主の場合には、基本的に契約不適合免責特約を付することが多く、後から法的な権利を実現するのは非常に難しくなります。
 このように実務的には契約不適合責任を追求するのは困難といえるため、売買契約を締結する際には事前に契約不適合責任についてお互いに確認しておく等、何かしらの対策をしておくのがいいでしょう。

 

【本件事例の結論】
 本件事例では「数量」に不足があります。数量に関する契約不適合性の判断は、当事者において目的物の実際に有する数量を確保するため、一定の面積・容積・重量・員数又は尺度あることを売主が契約において表示し、かつこの数量を基礎として代金額が定められているか否かで行います。これをもとに判断すると、本件事例は「数量に関して契約の内容に適合しない」といえます。
 以上から、Yは契約不適合責任があることを理由に代金減額請求、予定していた建物を建てることができなくなっているため契約の解除、損害賠償請求をすることができます。

 

【悩んだときには、ご相談を】
 言葉も制度も難しい、契約不適合責任。

この言葉に直面し、悩まれた場合には、弁護士を頼ってみてはいかがでしょうか。

 

【監修:弁護士法人山村法律事務所】