TEL045-211-4275

営業時間:10:00~17:00 定休日:土日祝日

〒231-0005
神奈川県横浜市中区本町3丁目24-2
ニュー本町ビル 6階

みんなが知らない司法の現実① ~裁判に勝っても、もらえるのは「紙」だけ⁈~

2024年08月23日

1.「裁判」について!!

 知っておくべき「裁判」・「司法の現実」について、お伝えしていきたいと思います。


 「裁判」のようなトラブルに巻き込まれずに、企業運営ができる方が多数だと思います。ただ、万が一、保険で解決できないようなトラブルになった場合には、「裁判」になったらどうなるのか、という点も知っておくことは重要です。

 

2.「裁判」とは?!

(1)裁判のスピード

 残念ながら、「裁判」というのは、万能さからは、ほど遠い制度だと思います。「裁判」は、国家が最終的にトラブルについて判断し、解決する制度なので、そのため公正さ、裁判を受ける権利の保護などの制約から、スピード感はありません。訴訟では、1年前後かかるのが一般的です。そのため、一方が急いでいたとしても、裁判によって早急に解決することはできません。

 「裁判」制度のできること、できないことを把握して、目の前のトラブルを解決していく姿勢が必要です。弁護士に相談する際にも、「裁判」は一つの方法と捉えて、複数の視点で解決方法を検討してくれる弁護士に相談できるのが良いでしょう。

 

(2)「真実」が全て明らかになるわけではない

 裁判を行う際には、「裁判官」が最終的に、双方が主張、立証した資料から判決を下します。
 「裁判官」からすれば、裁判の中で、見ることができる資料に基づいて判断を下さなければなりません。あくまでその事件の当事者ではなく、第三者として、事後的に、残っている資料から判断するしかないのです。そのため、「証拠」が重要になってきます。裁判では、残っている証拠から過去のことを判断するほかないので、「証拠」が重要になってきます。もちろん、人の証言により最終的な判断を行わないといけない場合もあります。ただ、人の証言は、人の記憶に左右されますし、立場や利害関係にも影響されやすいものです。そのため、基本的には、残っている「紙の資料」のほうが動かしがたいものとして、判断の中核になることは多いです。
 「裁判なのに、真実を分かってくれない!!」と嘆いても、これを変えることはできません。あくまで裁判というのは、裁判官により、事後的に、客観的に紛争解決の判断をしていく、という制度なので、その制度上の限界があるのです。

 

 企業運営をしていくためには、トラブルに備えて、証拠を残していくというマインドをもって進めていかなければならないと言えるでしょう。契約書も「証拠」の一つです。「言った・言わない」などでもトラブルになることが多いですが、できる限り、契約に関する事柄は、書面に残しておくべきです。とはいえ、毎回、契約書、合意書を作ることもできないと思いますので、電子メールやチャット等でも良いので、「後で文字で確認できるように」契約内容を残しておくことは非常に大事な心構えです。

(3)裁判に勝っても、もらえるのは「紙」だけ?!

 最後に、裁判に勝つことと、目的達成ができるかどうかにも、隔たりがあります。

 不動産における大家業を例に挙げます。

 家賃不払で、立退請求+不払賃料を求めて裁判に訴え、勝ったとします。ただ、それで手に入るのは、「強制執行手続」に進めるための、「判決書」といった書類だけです。具体的に、立ち退いてもらうための手続や、賃料を払ってもらうための差押手続は、別途強制執行手続を行わなければなりません。
 「裁判に勝った」としても、求めた内容を国が補償してくれる制度ではないのです。金銭請求については、「財産のないところからは取れない」になりますし、強制執行等については別途執行費用が、発生してしまいます。


3.まとめ

 今回は、裁判制度の限界、問題点ということをお伝えしました。

 企業運営を進めるうえで、「何かあったら、裁判」という考え方は絶対にいけません。余裕があるときにこそ、「実際にトラブルにあったらどう対処すべきか。」事前に心構えをもっておいたほうが良いでしょう。

 事前の情報収集と、いざとなったら早期に専門家に相談するということを肝に銘じて、リスクを抑える企業運営に努めましょう。

【文責:弁護士 山村 暢彦】