2024年10月21日
未払いの金銭トラブルに直面している中小企業経営者の方へ。
民事上の未払い問題では、警察や役所の支援を期待するのは難しく、自己責任で対応を進める必要があります。そこで、裁判所を利用した債権回収手続きを検討することが重要です。
本記事では、具体的な手続きの流れやポイントを解説します。
-
1.債権回収手続きとは?
債権回収とは、未払い金を回収するための法的手続きです。多くの場合、裁判所を通じて強制執行の手続きを視野に入れる必要があります。これにより、相手方が自発的に支払いを行わない場合でも、法的に支払いを求めることが可能になります。
-
2.一般的な債権回収の手段
債権回収にはいくつかの手段がありますが、ここでは3つの代表的な方法をご紹介します。
①弁護士からの内容証明郵便送付
弁護士による内容証明郵便の送付は、「裁判を起こされるかもしれない」というプレッシャーを相手方に与える効果があります。特に、一般消費者が相手の場合には効果が期待できますが、企業間での紛争では効果が薄いことも多いです。
②少額訴訟および訴訟手続き
少額訴訟は、60万円以下の請求金額について利用できる簡易な手続きで、1回の期日で判決が下されるため、比較的短期間(約2〜3カ月)で解決可能です。しかし、相手が欠席した場合には、次の段階である強制執行を検討する必要があります。なお、1企業につき年10回までという制約もあります。
通常の訴訟を選択する場合、解決までに1年以上かかることも多く、和解での解決が望まれることもありますが、そうでない場合には、勝訴判決を取得して強制執行手続きに進むことが一般的です。
③強制執行手続き
強制執行は、相手方の資産(不動産、預貯金、代金債権など)を差し押さえることで未払い金を回収する手続きです。
◇不動産差し押さえ:価値のある不動産を保有している場合は効果的です。競売という手続にて不動産をお金に変えて債権回収することを目指します。実際には、競売を起こされては困るということで、その前に和解で決着することが多いです。
◇預貯金の差し押さえ:一般的な回収方法ですが、差押え時に残高が少ないと回収できないリスクがあります。一方で、金融機関からの借り入れがある相手方ですと、差し押さえがなされると融資を一括返済しなければならなくなるというリスクがあるため、そのプレッシャーによって、相手から債権回収することができる可能性もあります。
◇工事代金債権の差し押さえ:工事現場の元請けから支払われる代金や、取引先からの報酬債権を差し押さえる方法です。ただし、契約の解除や支払停止のリスクもあるため、プレッシャーを与える可能性が高いですが、決定打になることも少ないという実情もあります。
3.債権回収手続きの注意点と和解の重要性
裁判所を利用した債権回収手続きは万能ではなく、弁護士費用や労力が発生します。また、相手からの回収が確実にできるとは限りません。そのため、状況によっては、和解によって一部の金額を早期に回収することが賢明な判断となることもあります。和解のメリットは、法的手続きにかかる時間と費用を節約できる点です。
4.強制執行手続きに必要な情報
強制執行を進めるためには、あらかじめ相手方に関する情報を集めておくことが非常に重要です。以下の情報を事前に収集しておくことで、手続きが円滑に進みます。
◇取引銀行の情報:支店名や口座番号を把握しておくと、預貯金の差し押さえが比較的容易になります。
◇保有不動産:相手の資産状況を把握することで、不動産差し押さえを検討する際に役立ちます。
◇取引先情報:他の現場や取引先の情報を知っておくことで、代金債権の差し押さえが可能になります。
まとめ -債権回収で困ったら弁護士に相談を-
債権回収の手続きは専門的であり、経験が求められる分野です。未払いトラブルに直面した場合は、早期に債権回収の専門弁護士に相談することが成功への第一歩です。裁判所を活用した強制執行手続きや、和解による解決方法など、状況に応じた最適なアドバイスを受けることができます。
【弁護士の一言】
そもそも、債権回収しなければならない状態を回避するのも非常に大事です。契約書のチェックという形式的な部分だけではなく、①極力、前金を増額させる、②デポジット(預り金)を設けておく、③出来高等進捗率に合わせて定期的に代金を受け取る、④何かトラブルがあった場合、他の債権と相殺できる条項を設けておく、などです。
このような債権回収を未然に防ぐための対応は、単純な「契約書のチェック」だけではなく、ビジネスの性質にあわせて、契約交渉段階から弁護士と相談して進めていくことが必要になります。
「中小企業の債権回収」は「契約交渉時点」から始まっている、といっても過言ではありません。
【監修:弁護士法人山村法律事務所】
相談だけでも受付中ですので、まずは横浜の弁護士へお気軽にご相談ください。