2023年03月17日
最初の契約通りに工事が終わる方が珍しい
建設現場では「最初の契約通りに工事が終わる方が珍しい」と言われるほど、追加工事が発生しやすいのが実情です。
地盤の予想外の弱さ、近隣住民とのトラブル、天候の悪化など、当初の見積では想定しきれない要素が多いためです。
しかしその一方で、契約書が存在しない、あるいは請求書や口頭のやり取りだけで工事が進んでしまうケースも多く、追加工事代金をめぐるトラブルは後を絶ちません。
「追加分の費用を払ってもらえない」「言った言わないの争いに発展した」といった問題は、実務上非常によく見られます。
この記事では、こうした追加工事にまつわる法的リスクとトラブル事例を解説し、企業としてどのようにリスクを防止・管理すべきか、弁護士視点でわかりやすくお伝えします。
建設業で追加工事が発生しやすい構造的背景とは?
建設業界では、当初の契約内容だけで工事が完結するケースのほうが稀です。工期中に様々な要因が重なり、契約時点では予測しきれなかった作業が追加で必要となることが多くあります。
想定外の事象が起きやすい現場のリアル
地盤調査の不足による基礎設計の変更、隣地住人との越境や騒音トラブル、天候の影響による工程の見直しなど、現場は常に変化に晒されています。こうした対応は「追加工事」として扱われることが多く、当初の契約だけでは対応しきれないのが実態です。
契約書の未整備がトラブルを招く
問題は、こうした変更や追加が生じるにもかかわらず、契約書が簡略化されがちな点です。注文書と請書だけで契約が成立していたり、時には請求書のみのやり取りという例もあります。このような状況では、「どこまでが契約内か」「追加工事の費用を誰が負担するか」が曖昧になり、紛争に発展しやすくなります。
工事の債務不履行トラブルについてはこちらもご参考になさってください。
追加工事代金トラブルが起こる3大原因と法的リスク
契約内容の不明確さと「想定のズレ」
「この工事は当然やってくれるものだと思っていた」「元々契約に含まれているはずだ」という双方の思い込みが食い違うと、代金の請求や支払いを巡る争いが発生します。契約書に詳細な工事内容が明記されていないと、どこからが“追加工事”なのか判別がつかず、認識の相違が生まれやすいのです。
口頭合意や請求書だけの対応
現場対応を優先するあまり、書面を交わす前に工事が始まってしまうことがあります。「とりあえず工事を進めて、後から請求書を出す」といった対応は、証拠が乏しくトラブルの火種となります。法律上、口頭での合意も契約として成立しますが、それを証明する証拠(メール、見積書、議事録など)がなければ、裁判で認められる可能性は低くなります。
建設業法違反につながる形式不備
建設業法第19条では、請負契約書の作成が義務付けられており、追加工事についても原則として「変更契約書」の作成が求められます。書面がなければ、元請が下請に対して費用負担を強いるような場面では、法令違反とみなされる可能性もあり、企業としてのリスクが増大します。
顧問弁護士がいると変わる実務対応と予防策
合意書・契約書の整備が“現場判断”を守る
追加工事が必要になった際、「書面を交わすべきか」「どう合意を取るべきか」といった判断を現場任せにしてしまうと、後のトラブルに対応しきれません。顧問弁護士がいれば、工事途中でも即座に契約書や合意書を整備し、リスクの芽を摘むことができます。さらに、工事の実態に合わせた書面づくりを通じて、施工側の利益も確保できます。
証拠の残し方まで支援できる
トラブル対応の際には、契約書そのものだけでなく「やり取りの記録」が重要です。メール・見積書・写真・現場日報など、証拠として有効なものをどのように残すべきか、顧問弁護士が具体的にアドバイスすることで、万一の訴訟時にも有利に進めることができます。
「請求する側」も「される側」もリスク管理が肝心
追加工事代金を請求する側にとっては、正当な請求を確実に回収するために。請求を受ける側にとっては、不当な請求を退けるために。どちらの立場であっても、事前の契約と証拠管理がものをいいます。トラブルが起きる前に相談できる顧問弁護士がいることで、現場の判断もスムーズになり、組織としてのリスク耐性が高まります。
まとめ:追加工事は避けられなくても、トラブルは予防できる
建設業界において、追加工事の発生は避けがたい現実ですが、トラブルに発展するかどうかは日頃の備え次第です。
契約内容の曖昧さ、口頭合意の多用、証拠の不備といった慣習が、代金の未回収や訴訟リスクを引き起こします。「書面化」と「証拠の保存」を徹底し、必要な場面で専門家の判断を仰ぐことが、実務上の最善策です。当事務所では、建設業の現場事情に精通した弁護士が、契約書の整備から日常的な相談対応まで、しっかりとサポートいたします。
「これって請求しても大丈夫?」「この合意、文書にすべき?」
そう感じたときこそ、早めのご相談がトラブルを防ぐ一歩となります。
建設工事の請負契約に関する紛争が起きてしまった場合、建設工事紛争審査会を使用するのも1つの選択肢です。
建設工事紛争審査会:当事者の申請に基づいて、あっせん、調停、仲裁を行う国土交通省の機関
【弁護士の一言】
追加工事代金トラブルは建築業界では日常茶飯事でしたが、2025年2月施行の建設業法改正でも、
追加工事代金の変更契約等を条項に盛り込む必要がでました。
施主側からは、追加工事代金も合理的なものは仕方ないという認識が、この改正により進めばと思います。
他方、どんぶり勘定で仕事を受けてしまう建築会社も多く、いまだに倒産の原因になっていることが多いです。
いずれにせよ、必要な見積もり、利益率を把握した代金提案に加えて、現場担当者の契約実務の徹底と、合理的な追加工事代金変更など、金額とトラブルが多く、法務対応の必要性が強い業界だと言えるでしょう。
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