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カスハラ法とは? 横浜の弁護士がわかりやすく解説

2025年01月10日

 近年、日本では「カスハラ」という言葉をよく耳にするようになりました。これは、「カスタマー・ハラスメント」の略で、企業やその従業員が顧客から不当な要求を受けることをいいます。カスハラ法という言葉自体は、正式な法律名ではありませんが、カスハラを取り締まるための法的な取り組みや対策について説明するときに使われることがあります。今回は、カスハラが社会に与える影響、具体的なケース、そしてカスハラ法に関連する法的な取り組みを横浜の弁護士がわかりやすく解説します。

1. カスハラとは?

 「カスハラ」という言葉は、元々は「カスタマー(顧客)」と「ハラスメント(嫌がらせ)」を組み合わせた造語になります。顧客からの不適切な行動や要求が、企業やその従業員にとってストレスや困難を引き起こす場合があります。例を挙げると、理不尽なクレームを繰り返したり、暴力的な言動をしたりすることが典型的なものです。

カスハラが発生すると、従業員のメンタルヘルスに悪影響を与え、企業の運営にも悪い影響を及ぼすことがあります。そのため、企業側ではカスハラを防ぐための対策が求められることとなります。

 

【東京都 カスハラ防止に関する指針(ガイドライン)】
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2024/12/25/10.html

2. カスハラの具体例

 カスハラがどのように発生するのかを理解するためには、具体的な例をみると、分かりやすいと思います。いくつかのカスハラのケースを挙げてみます。

①不当なクレーム

 顧客が商品やサービスに不満を抱いたとき、クレームを申し立てることがあるでしょう。しかし、そのクレームが過剰であったり、無理難題を押し付けてきたりする場合があります。例えば、明らかに顧客自身のミスで商品を破損したにも関わらず、従業員に暴言を吐いたり、無理な返金を要求したりすることがカスハラに該当します。

②過剰な要求

 カスハラの中には、企業や従業員に過剰なサービスを要求するケースもあります。例えば、営業時間外での連絡を要求したり、企業ポリシーに反するサービスを強要したりすることです。こうした要求に対応することは、従業員にとって大きな負担となり、業務の効率を妨げる原因となります。

③身体的・言葉による暴力

 一部の顧客は、感情的になりすぎて、従業員に対して暴力を振るったり、悪口や脅迫をしたりすることがあります。これらの行為は明らかなカスハラであり、企業にとっても大きな問題となります。企業は従業員の安全を確保しながら業務を行える環境を整える必要があり、暴力的行為は絶対に容認されるべきではありません。

3. カスハラ法に関連する法律

 カスハラは単なる問題行動にとどまらず、法的な観点からも取り締まりが強化されるようになってきました。カスハラを防ぐためにいくつかの法律が適用されています。主に次の法律が関連してきます。

①労働基準法

 労働基準法は、企業が従業員に対して適切な労働環境を提供し、過酷な労働を強いないようにするための法律です。カスハラが原因で、従業員が過度なストレスや精神的な負担を受けるような場合、労働基準法に基づいて企業に対して改善が求められます。企業は従業員を守るために、カスハラへの対策を講じる義務があります。

②刑法

 カスハラが暴力的行為を伴った場合、刑法が適用されることがあります。顧客が従業員に暴力を振るったり、脅迫したりするような場合、傷害罪や、脅迫罪に該当する可能性があります。

③民法

 契約に基づく義務を果たさない場合や、過度な要求を行った場合に、民法では損害賠償が求められることがあります。カスハラ行為によって企業が損害を被った場合、顧客に対して法的措置を取ることが可能となります。

4. カスハラ防止のための企業の取り組み

 企業側もカスハラを防ぐために積極的に対策を講じる必要があります。企業が行うべき取り組みについて、いくつか紹介します。

①従業員教育

 従業員に対して、カスハラの予防や対応方法についての教育を行うことが重要となります。従業員がカスハラを受けた場合、どのように対処するべきか、または上司に報告する方法を理解しておくことが必要です。

②顧客対応のマニュアル作成

 企業は、顧客対応の際に従業員が遵守すべき対応マニュアルを作成することが有効となるでしょう。このマニュアルには、カスハラを避けるための言葉遣いや、問題が発生した場合の対応方法を明記します。統一された対応を行うことで、カスハラのリスクを減らすことが可能となります。

③物理的・精神的サポート

 カスハラが発生した場合、従業員が心理的ダメージを受けることがあります。企業は、メンタルヘルスをサポートする体制を整えることが大切です。また、従業員がカスハラを受けた場合、物理的に安全な場所に避難することができるようにすることも重要となるでしょう。

【厚生労働省】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24067.html

5. まとめ

 カスハラは企業や従業員にとって、非常に深刻な問題です。顧客からの不当な要求や暴力的行為は、業務に悪影響を与え、さらには従業員の健康や精神状態にも悪影響を及ぼします。そのため、企業はカスハラに対する事前対策を講じ、従業員の安全と健全な労働環境を守る義務があります。
 法的には労働基準法・刑法・民法などがカスハラに関連しており、企業はこれらの法律を遵守し、適切な対応をすることが求められます。
 カスハラ防止には企業全体での意識改革が必要であり、従業員一人一人が適切に対処できるような体制作りが求められます。

【監修:弁護士法人山村法律事務所】

【弁護士の一言】

 近年カスハラが、社会問題に発展しており、企業としても適切な対応をしないと、顧客との関係で「対応がおかしい」と法的責任を取らされたり、従業員が病んでしまい、従業員との関係で労働問題が発生したりなど、問題が生じることが増えています。
 カスハラが、「企業に対して理不尽な要求、クレーム」ということですから、「理不尽な要求か、否か」の判断が非常に重要です。企業に落ち度があれば適切に謝罪する。過剰な要求(カスハラ)であれば、毅然とした態度で要求を跳ね除ける。
 この「理不尽な要求か、否か」というのが、どうしても当該状況をもとにした高度な法的な判断が必要になるケースが多く、弊所でも各企業と連携して対応している事案が増えてきました。
 カスハラ問題は、会社と従業員を守るためにも、厳正に対処していく必要があるでしょう。何から着手してよいかわからない場合は、気軽に弊所へお問い合わせください。