【実録・弁護士が解決】煽り運転からクレーマー化…運送会社を守り抜いた対応とは?

2025年09月11日

「ドライバーが暴行を加えた」と、SNSや取引先に一方的なクレームを拡散する人物。企業としては、まず自社従業員の非を疑い、事実確認に追われるところから始まりました。

本件は、ある運送会社のドライバーが、道路上で悪質な煽り運転を受けた末、ガソリンスタンドで相手から挑発や体当たりをされるという事件から始まりました。ドライバーも言い返してはいたものの、手は出しておらず、会社としては慎重に調査を進めた結果、ドライブレコーダーによりドライバー側の正当性が裏付けられました。

にもかかわらず、相手は企業名を出してSNSで事実無根の投稿を繰り返し、取引先へのクレーム電話まで。
こうした中で、当事務所は弁護士として迅速に事実関係を把握し、相手の勤務先や発信元を特定。結果的に、企業としての信頼は失われることなく、むしろ落ち着いた対応が高評価につながる結果となりました。

※カスタマーハラスメント対策マニュアル(厚生労働省HP)

本記事では、企業を狙う悪質なクレーマー化にどう向き合うか、弁護士の対応例をもとに解説します。

煽り運転から暴言・挑発、そしてSNS拡散へ「よくあるクレーマー化のパターン」

本件の発端は、運送会社のドライバーが一般道路を通常運行していたところ、後方から車間を詰めるなどの悪質な煽り運転を受けたことでした。信号で停止後も執拗に後ろからプレッシャーをかけられ、最終的にガソリンスタンドに入った際、相手が車から降りてきて、ドライバーに向かって暴言を吐きながら接近し、肩をぶつけるなどの挑発行為に及びました。

ドライバーも驚きと怒りから言い返す場面はあったものの、身体的な接触や手出しは一切なし。しかし、相手はその場で騒ぎを起こしただけでなく、その後、自らの主張を脚色し、「運送会社のドライバーから暴行を受けた」とする虚偽の情報を企業のHPから把握した取引先に電話で訴え、さらにはSNS上で会社名や車両ナンバーを挙げて非難する投稿を繰り返しました。

こうした「当たり屋型クレーマー」は、最初は交通トラブルの当事者として登場しますが、その後、自分が被害者であるかのように一方的な主張を拡散し、企業に対して名誉毀損的な攻撃を仕掛けてくるのが特徴です。特に、SNSの活用によって、企業名を検索すればすぐに出てくるような形での投稿がなされると、風評被害や信用毀損のリスクは一気に拡大します。

このようなケースでは、感情的な反応や過剰な謝罪ではなく、まずは事実関係を正確に把握し、冷静に対応することが肝要です。次節では、実際に企業がどのように初動対応を進め、ドライブレコーダーの映像や弁護士による調査を通じて、事実を確定していったのかを見ていきます。

ドライブレコーダーで事実を確定「内部調査と弁護士の初動対応」

トラブルの報告を受けた運送会社では、まず「本当にドライバーは手を出していないのか?」という懸念が社内で共有されました。SNSや取引先にまで「暴行された」と訴えが広がっている中、仮に一部でも過失があれば企業としての対応が問われかねません。代表取締役も含め、当初は「喧嘩両成敗ではないか」との可能性を視野に入れ、慎重な判断が求められました。

しかし、当該車両にはドライブレコーダーが搭載されており、該当日時の映像を確認することで状況は一変します。そこには、相手車両による明確な煽り運転、ガソリンスタンドでの威圧的な接近、さらには肩をぶつけるなどの挑発行為が鮮明に記録されており、ドライバーが物理的に手を出すことは一切ありませんでした。映像は一貫して、ドライバーが防御的かつ冷静に対応している様子を映し出していました。

事実が裏付けられたことで、会社としては一転して「不当な風評被害への対処」に舵を切ることになります。この段階で、顧問弁護士である当事務所に事案の情報を共有いただき、速やかに法的な観点からの支援を開始しました。

まず着手したのは、相手方の特定です。SNSに投稿された情報や、取引先にかけられた電話番号の履歴をもとに、発信元を調査。結果として、相手が勤務する企業の社用携帯からクレーム電話をしていたことが判明しました。これは、勤務先に対する信用毀損や業務妨害にもなりかねない問題です。

弁護士からは、証拠に基づいた事実の整理と、万が一訴訟や仮処分に進んだ場合の対応方針について企業側へ助言。並行して、取引先への連絡方法や社内の記録保存体制の整備もサポートしました。

こうした初動の冷静な調査と対応が、結果的に企業の信用を守る決め手となりました。

企業を守る「冷静な対応」と「拡散リスク管理」今後の教訓と備え

本件のようなケースでは、相手が感情的に暴走し、SNSや取引先に対して一方的な情報をばらまくことがあります。企業として最も避けたいのは、こうした挑発に引きずられ、拙速に謝罪をしたり、事実確認を待たずして外部に対応を表明してしまうことです。今回は、社内調査とドライブレコーダーの確認を経て、「事実を押さえてから動く」という判断を徹底したことが、結果的に企業の信頼を守ることに直結しました。

また、SNS時代では「炎上させる側」が必ずしも世論の支持を得るわけではありません。今回も、相手が企業名を出して一方的に非難投稿を繰り返したものの、閲覧者からは「一方の主張だけで企業を攻撃するのはおかしい」「これはクレーマーではないか」といった冷静な意見が多く寄せられました。SNS利用者のリテラシーは年々高まっており、拙速な企業批判が逆に発信者の信用を落とすケースも増えています。

さらに、今回のように相手が「社用携帯」を使って取引先にクレームを入れていたという事実は、勤務先企業にも大きな影響を及ぼしました。企業の信用を背負って行動する立場にあるにもかかわらず、私的な恨みや憤りで他社を攻撃する行為が、いかに危険かを示す教訓です。

企業としては、同様の事案に備えて以下のような体制を整えておくことが重要です。

・ドライブレコーダーや日報等の記録体制の徹底

・社内での初動対応フローの整備

・弁護士との連携体制(顧問契約や相談窓口の明確化)

運送業の法務についてまとめた記事はこちら

まとめ

本件では、煽り運転から始まった一連の迷惑行為に対し、企業側が感情的に反応せず、ドライブレコーダーによる事実確認と弁護士の冷静な対応によって、信用毀損を未然に防ぐことができました。SNSによる情報拡散のリスクが高まる中、企業としては「疑わしきは調査し、事実に基づき毅然と対応する」姿勢が、結果的に社内外からの信頼につながります。万が一、不当なクレームや拡散に巻き込まれた際は、早期に弁護士に相談することが有効です。

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【弁護士の一言】

毎度、クレーマー系の対応をする度に思うのですが、「なぜ、こんなに攻撃的になるのか、なんでこんなに怒り続けられるのか」といのが、正直な疑問です。ただ、世の中、現実的に、ストレスから過剰に攻撃的になってしまう方も度々生じてしまうようです。私自身びっくりしたのが、会社の社用携帯で、ここまでの迷惑行為を行っていたことですね。詳細な確認はできませんでしたが、勤務先企業では相当な処分が行われたようです。

ただ、今回は、単なるクレーマーレベルではなく、「取引先にクレーム電話を入れる」その上で、「やめてほしければと、金銭を要求する」など、恐喝罪に該当する非常に悪質なケースでした。

このような場面でも、ドライブレコーダーがあったため、企業として毅然とした対応ができましたので、社用車にはドライブレコーダーの設置は非常に重要な時代になったと言えるでしょう。

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