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買主が手付金を支払ったのに、売主が解約を希望?法的にどうなる?横浜市の弁護士が解説

2025年06月25日

買主が手付金を支払った後、売主が一方的に解約したいと言い出した

こんにちは。今回は、不動産売買契約において「買主が手付金を支払った後、売主が一方的に解約したいと言い出した」

いう事例をもとに、予見されるトラブルと法的な整理について解説します。

 

1.よくあるトラブル事例:売主から突然の解約通告

ある日、当事務所にこのようなご相談がありました。

 

「不動産売買契約を締結し、手付金として100万円を支払いました。

ところが数日後、売主から“やっぱり売るのをやめたい”と言われました。こんなことって許されるのでしょうか?」

 

このようなケース、実は不動産取引の現場では意外と多く発生します。特に昨今の地価上昇の影響で、売主が後になって『もっと高く売れるのでは?』と欲が出て解約したいと言い出すパターンも散見されます。

 

2.「手付金」の性質とは?【宅建業法と民法】

 

手付金には大きく分けて以下の3つの性質があります。

 

  • 証約手付:契約が成立したことの証拠として交付される。

 

  • 解約手付:一定条件のもとで契約を解除できる権利を示す。

 

  • 違約手付:契約違反時の損害賠償の予定としての意味合い。

 

実務上は「解約手付」として扱われることが一般的です。

▼解約手付の効力

民法第557条により、

買主は手付金を放棄することで解約できる

 

売主は手付金の倍額を返すことで解約できる

 

というルールが定められています。ただし、これは「相手方が履行に着手するまで」です。

つまり、買主がローン申込や登記準備など、契約履行に向けた行動を始めていれば、一方的な解約は認められないことになります。

3.宅建業法上の制限も注意

宅地建物取引業法(宅建業法)では、消費者保護の観点から以下のような規制もあります。

 

  • ・手付金の上限

宅建業者が売主となる場合、手付金の額は物件価格の20%以下でなければなりません(宅建業法第39条)

 

  • ・保全措置を講ずる義務

宅建業者は、一定額以上の手付金を買主である一般消費者から受領する際には保全措置(保証保険や保証委託契約など)を講じる必要があります。

 

※保全措置を講じる必要がない場合

 

・未完成物件の場合:受領する手付金等の額が売買代金の5%以下、かつ1000万円以下であるとき

 

・完成物件の場合:受領する手付金等の額が売買代金の10%以下、かつ1000万円以下であるとき

 

・前記①、②の額を超える手付金等の受領以前に、買主への所有権移転登記がなされるか、または買主が所有権の登記をしたとき

4.売主の一方的な解約は許されるのか?

 

繰り返しになりますが、買主が契約履行に着手していれば、売主は一方的に解約することはできません。

 

この場合、売主が「やっぱり売りたくない」といっても、契約違反(債務不履行)として損害賠償請求や履行請求の対象となる可能性があります。

5.買主が取るべき対応

売主が一方的に解約を申し出た場合、買主としては次のような選択肢があります。

 

  • ・契約の履行を請求(裁判で強制的に履行を求める)

 

  • ・損害賠償請求(契約解除を前提に損害分を請求)

 

  • ・倍額の手付金返還を受領する(売主がこれを申し出た場合)

 

こういったトラブルを防ぐためには、物件契約前に契約先や不動産会社とよく話し合い、話し合った内容は書面に残す、など認識のズレを無くすようにすることも重要です。

ただし、具体的な対応は契約内容や事実関係により変わりますので、早めに弁護士に相談することが重要です。

 

工事契約のトラブルでおこまりの方はこちらの記事もご参考にしてみてはいかがでしょうか?

※工事業者が作業をしてくれない、などの債務不履行についてまとめた記事に飛びます。

【弁護士の一言】

 手付解約は、トラブルも多く、仲介会社が間に入っている際には、買主・売主の認識もずれがちで、ねちっこいトラブルに発展することが多いです。今回は、基本的な手付解約のルールについてお話ししましたが、現実的には、より複雑な事案が多いです。「履行の着手」という手付解約ができる状態か否か、この認識がずれることも多いですし、そもそも「手付解約場面か違約解約場面か」の判断も非常に難しく、不動産トラブルの重要なポイントが詰まっている印象です。その上、解約場面なので、一刻も早く解除通知を出さないといけないという緊急性を要する場面も、多く、非常に難しい分野だと思います。

特に解除通知を早急に出すか出さないかの場面では、常日頃から不動産案件を中心に扱っている専門家に、一刻も早く相談すべき状況だといえるでしょう。

 

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