2025年07月28日
自社で制作した商品画像や説明文が、他社のネットショップに無断で使われていた──そんな経験はありませんか?
「どこかで見たと思ったらうちの文言だった」「画像がそのまま使われていた」と気づく企業は少なくありません。
こうした無断使用は、著作権や商標権の侵害にあたる可能性が高く、放置しておくとブランド価値の毀損や売上機会の損失にもつながりかねません。
とはいえ、相手が「知らなかった」「外注先がやった」と言い訳してくるケースも多く、自力で対応するには限界があります。
本記事では、商品画像・説明文の盗用がどのように権利侵害となるのか、そして弁護士名での通知がなぜ効果的なのかを、企業実務の視点で解説します。
商品画像・商品説明の盗用は「著作権侵害」にあたる?
自社で撮影・作成した商品画像や、独自の表現で書かれた説明文は、原則として著作権法により保護されます。
とくに写真は「写真の著作物」として創作性が認められやすく、説明文についても単なるスペック列挙ではなく、表現の工夫があれば著作物と判断される可能性が高いです。
他社がこれらを無断で使用している場合、著作権侵害となるおそれがあります。よくある誤解として「引用だから問題ない」と言われることもありますが、正当な引用と認められるには、主従関係や出典明示など厳格な要件があります。営利目的のECサイトでの使用は、ほとんどの場合「引用」に当たりません。
文化庁の著作権Q&Aでは、著作権制度の基本的な考え方をQ&A形式で回答していますので活用できるかと思います。
また、近年ではAI生成画像や文章の使用も増えていますが、生成物に創作性がある場合、そこにも著作権が発生する可能性があります。
無断使用に気づいたら、証拠を押さえ、速やかに対処を検討しましょう。
商標の無断使用は「商標権侵害」にもなる
著作権だけでなく、商標権の侵害も深刻です。自社で登録しているブランド名やロゴ、商品名が他社サイトに無断で使われている場合、それが「類似」と判断されれば、商標権侵害として差止請求や損害賠償請求の対象となり得ます。
商標権についての基礎知識や保護の考え方は、特許庁の商標制度の概要にて確認できます。
さらに、商標の無断使用は「不正競争防止法」による不正表示(他人の商品等表示に類似する表示の使用)にも該当する可能性があります。消費者庁も不正表示に関する注意喚起を出しており、企業の信用を守るための対策が求められています。
弁護士名での侵害通知が効果的な理由
こうした権利侵害に対して「とりあえず自社でメールを送る」という対応を取る企業もありますが、相手が対応しない・逆ギレする・外注業者の責任にするなど、スムーズに進まないことも少なくありません。
その際、有効なのが「弁護士名での通知」です。
法的根拠を明記し、相手にリスクを伝えることで、削除や使用停止といった対応が早期に得られるケースが多くあります。
また、通知前には証拠の保全が重要です。該当ページのスクリーンショットやウェブ魚拓など、客観的に記録を残しておくことで、万が一訴訟や損害賠償請求を行う場合にも有効です。
仮に相手方が無視したり、悪質な対応を取った場合でも、弁護士を通じて対応を進めれば、損害賠償請求や差止請求を見据えた対応が可能になります。インターネット上の違法・有害情報に関しては、インターネット・ホットラインセンターに通報するという選択肢もあります。
まとめ|放置せず、冷静に証拠確保と専門家対応を
商品画像やブランド表記の盗用は、自社の信用や売上に直結する深刻な問題です。特に、意図せず他社に真似されている場合や、対応が煩雑になりそうな場合は、証拠を押さえたうえで、弁護士に相談することがスムーズな解決への第一歩です。
悪意なく使用している業者も多いため、感情的にならず、専門家の名前で丁寧かつ確実に通知を行うことが、リスクを最小限に抑えるポイントです。
【弁護士の一言】
企業法務を行っていると一定数生じる相談です。盗用しているほうは、何となく悪いことだとわかっていながらも、「これぐらいいいだろう。」という人も多いように思います。ある程度の規模の会社でも、担当者が「これぐらい…」とやってしまっているケースもありますし、零細企業ですと、当たり前のようにやっている企業もあります。
厳密には訴訟を提起して差し止め請求を行うのが基本的な主張内容になりますが、この手の著作物の盗用事例では、よっぽど悪質なものを除けば、弁護士名義での警告文で解決することも非常に多いです。
モグラたたきのように、ゼロになるわけではないですが、自社製品のブランド価値の低下を防ぐためには、地道に調査⇒警告を重ねていく必要がある問題だといえるでしょう。
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